実はこのひと言は、同じ先輩(女性)に二度言われているのです(笑)。一度目は出産前。先輩と同じ部門で火力発電所のシステム構築に携わっていた頃でした。1日に打ち合わせが3 つ入ることも珍しくなく準備に費やす時間もないとぼやいていた時に、そう助言してくれたのです。そして二度目は出産後。復帰したものの、育児との両立で"時間があればもっとできるのに・・・"と、愚痴をこぼした時でした。
ここだけの話、一度目に「だめだ、だめだ、と言われながら仕事をする時期。それでいい」と、言われたことを私はすっかり忘れていました。その時は、私自身この言葉をきちんと咀嚼できていなかったのかもしれません。でも、二度目に言われた時は、すっと心に落ちたのが印象的でした。
時間のせいにしていた自分への気づき
今の自分を認められるように
30 歳で出産をし、育休を経て職場に戻ってみれば、同僚達は、着実に経験を積み、実力をつけていました。それだけならまだしも、新人時代に面倒を見た後輩が自分の上司になった時は、努力では超えられないものがあると深く落ち込みました。出産・育児でキャリアが遅れる可能性があるのは仕方ないこと。頭ではわかっていましたが、いざその立場になってみると、不足の経験がとりかえしのつかないもののように感じ、このまま同期や同僚の昇進を見送るばかりなのかと復帰して数年間は、何度も仕事を辞めることが頭をよぎったくらいです。
そんな状況もあり、「私だって時間さえあればもっとできるのに」と、思いたかったのかもしれません。でも、先輩の一言で初めて"時間"を言い訳にしている自分に気づいたのです。仕事にかけられる時間の問題ではなく、現状のアウトプットが自分の実力だということ。それを素直に受け止められた時、はっと目が覚めました。このひと言をきっかけに、不足している経験があるならなんとかして積めばいい。「次のチャンスに向けて、自分の実力を高められるようがんばろう。今は、だめだ、だめだと言われながら仕事をする時期。言い訳をすることなく、今の自分を認めよう。」と気持ちを切り替える事ができました。
迷いを振り切って仕事に向き合えたことで、その後私は管理職昇格のチャンスを得ることができ、今は課長職として自分が目指していた仕事に携わっています。またとないチャンスが得られたのも、それを生かすことができたのも、仕事を通して様々な経験をしてきたお陰です。
このひと言に背中を押され、あの時、辞めずに仕事を続けてきて本当に良かったと思います。
~働く女性たちへのメッセージ~
子どもがいるからキャリアが遅れる!?
でも、辛い時期を支えてくれるのも子ども
男性とは異なり、女性は出産・育児によりキャリアが大きく左右されます。出産や育児休暇のタイミングによっては、昇進が遅れることもあります。同期や後輩が自分よりどんどん先に行くのを目の当たりにするのは、正直、辛いものです。
でも、その反面、思い通りにいかない状況でモチベーションが下がっていた時、私を支えてくれたのも子どもでした。私の場合は、完全にやる気は落ちてしまっているのに、仕事は忙しく、そのギャップに思い悩んでいた時がそうでした。家で料理をしたり、子どもと一緒に絵を描いたり・・・。子どもと触れ合うことで、どれほど救われたかわかりません。
出産や子育てによる制約で一時的にキャリアが遅れる可能性がある、という事実は否めません。でも、その反面、子どもたちが母親の心の支えになってくれるときもたくさんあります。その両面を受け容れてキャリアを考えられるかどうかが、女性にとっては大切なのではないでしょうか。私もそうでしたが、焦る時期は誰にでもあると思います。是非そこであきらめずに、自分なりのキャリアプランを長い視野に立って描いていってほしいと思います。