課長への昇進の話が出たのは、異業種に転職してまだ3 年あまりの頃でした。私としてはまだ仕事を覚えるのに必死で、まずはこの道のプロになろうと奮闘している真最中でしたから、このお話はまさに青天の霹靂でした。ですから、当初は断るつもりでいたのです。
当時の私はというと、小さな子どもを抱え、仕事と育児の両立に必死でした。リサーチという仕事柄、非常にタイトなスケジュールの案件も少なくありません。担当する以上は納得できるレポーティングをしたいと、家に仕事を持ち帰ることも度々でした。ただでさえ時間が足りないのに、さらに部下を持つなどとはとても考えられない状況でした。
ところが、上司(社長)は「時間をかければいいというものではない。大切なのは、時間の使い方だ。できる範囲でやることを考えろ」と、課長職につくよう説得してくださいました。あればあるだけの時間を費やして仕事をしていた私にとって、社長のひと言は衝撃的でした。この出来事は、それまでの働き方を見直すいい機会になったと思っています。
さらにハードになった毎日のお陰で
身についたタイムマネジメント力
こうして4 人の部下を持つことになった私の生活は、よりハードなものになりました。時間の使い方を意識するように変わったとはいえ、すぐにできるようになるものではありません。どんなに忙しくても18 時までには保育園に子どもを迎えに行かなければなりませんから、とにかく昼間の時間は戦争でした。夕方になると周囲も気を遣ってくれるくらい(笑)。当時は携帯電話も一般的ではありませんでしたから、私が帰宅後は何かあれば自宅に連絡してもらうようにして、綱渡りのような日々を過ごしていましたね。
そんな生活がスタートして2 年も経つと、不思議とタイムマネジメント能力も鍛えられ、時間を意識する前に比べて同じ時間でも1.3 倍くらいの成果をあげることができるようになっていました。どうしても私がしなければならない仕事と部下に協力してもらう仕事を区別し、積極的にメンバーに甘える(笑)ことで、チームとして働くことの醍醐味も実感することができました。今振り返っても、当時の部下には様々な面でカバーしてもらったと思います。
~働く女性たちへのメッセージ~
チャンスは活かすべき
障害は物事を整理するチャンスととらえて
今、当時を振り返って言えることは、チャンスは活かすべきということですね。私自身、昇進の話を断ってしまっていたら、"集中すること""メンバーへの権限移譲""チームで動く醍醐味"を味わうことも、身につけることもできなかったと思います。何かしようとする時、目の前に壁があるととかく萎えてしまいがちです。でも、障害があるからこそ、何が問題なのか整理することができますし、本当にやりたいこ
とが見えてくるものだと感じています。表面的な問題に対処するのではなく、本質を見ると案外簡単に乗り越えられるものです。
私は、どんどん悩むべきだと思っています。悩んで整理することによって、悩むことを避けるよりもずっと早く前進することができます。今、目の前が真っ暗だと思っていても、ふと息継ぎをしてみると一気に目の前が開けることは珍しくはありません。何事も視点を変えれば、違った世界が見えてきます。
ちなみに、私の視点を変えるコツは、行き詰まったら物理的な視点を変えること。席を離れたり、ほんの少し散歩に出てみたり・・・。そうすることで不思議と冷静になれ、アイデアが浮かんできたりします。
どんなこともすぐにはできるようにはなりません。でも、続けていれば、必ずできるようになった自分をほめてあげたいと思える瞬間がやってきます。自分を信じてチャレンジして欲しいと思います。